たかがステッチ?

ヴィンテージが生産されていた頃、工場設備は今とは全く違っていました。

最も大きな違いは、ミシンは足踏みで、縫い糸はコットンだったこと。

今ではミシンはモーターになり、糸はポリエステル製が使われています。


ミシン考

古いミシンで味わいを醸す

古いミシンは底面の送り歯だけで生地を送るので、厚みのある段差を乗り上げるときには目が詰まり、降りるときは目が拡がるので、針目が一定になりません。

現代の工業用ミシンは、送り歯と同時に針も前後に動いて生地を送る「針送り機構」が標準化され、段差に影響されない美しい針目が形成されます。

 

サキュウでは環縫い(チェーンステッチ)工程は主にユニオンスペシャルを、本縫い工程は70〜80年代に主力だった三菱製のLT2、LS2を使用し、古いミシンの味わいを大切に縫製しています。

足踏みミシンは返し針が苦手

組み付け精度が低い昔のミシンは、返し針をすると糸が切れました。

そのため、可能な限り返し針をしない縫い方になっているのがヴィンテージです。

サキュウではその理由を理解した上で、細かく再現しています。



ステッチ考

コットンステッチで味わいを増す

ミシンがモーターになって高速化すると、コットン糸は速度についてゆけずにブツブツ切れました。

1950年代になると、熱に強く強度に優れた化学繊維が開発され、ほぼ全てのジーンズがポリエステル糸に変わりました。

この時から、色落ちするコットン糸の味わいは一般的なジーンズから永遠に失われることとなります。

ステッチの色落ち比較

中央:コットン糸のワンウオッシュ

右:コットン糸のユーズド

左:ポリエステル糸のユーズド

 

 

 3つとも元々は同じ色目のオレンジです。

左のポリエステル糸は色落ちしていませんが、右のコットン糸は白っぽく退色し、さらに一本のステッチの中で刻々と色が変化しています。

コットン糸の難しさ

強度が劣るコットン糸を、現代の設備で作るのは容易ではありません。

縫製ではミシン速度を落とした上に、強度が必要な部分はポリエステル糸で補強縫いを入れ、洗い加工ではストーンや物体を使わず、全面を手作業でアタリを入れてゆきます。

低コスト・高品質のためには、早く・効率的に・均一に生産することが求められる現在、それとは対極のもの作りを行いながら、他ブランドと同様のプライスタグをつけられるのが、もの作りのプロ集団である、私たちならでは仕事です。



コットンステッチの勢力図

私たちが日常使っている糸見本帳。

コットン100%は右下の明るい部分のほんの少しだけで、あとは全て化学繊維。

コットン糸を使いこなせる技術あるメーカーが少ない証拠ともいえます。