第11回コラム
アパレルOEMのお話
底が抜けました。
私どもの祖業のアパレルOEMですが、現在は既存のお取引先だけに限らせて頂き、ご紹介以外のご新規様はお断りしております。
結論から言いますと、OEMは全く儲からなくなってしまって、OEM部門を解散したからです。
利益が上がらなくなった原因は、新規参入を含めて同業者が増えすぎてしまったことです。
私どもが創業した2001年当時、ジーンズのOEMはまだまだ未開拓の分野でしたが、時間とともに参入障壁が低くなり、今では縫製工場・加工工場、生地屋、倒産やリストラにあったアパレル出身者などなど、市場規模を遥かに超える数のプレイヤーが乱立して、生産工場よりOEM業者の方が多い状態になっています。
こうなると、工場キャパが不足して工賃は跳ね上がる一方で、我々OEM業者の利益を削らないとオーダーを獲得できないという、ビジネスとして構造的な問題が出てきます。
つい最近も、社員20人で21億円もの売上を誇った老舗のOEM会社が、10億円の負債を抱えて倒産しました。
社員1人あたり1億円もの売上は充分以上のはずですが、負債が10億ということは人件費すら出ていなかったと考えられ、粗利率はせいぜい7〜8％だったと思われます。
つまり、売価100円の商品の仕入値が93円、利益はたったの7円ということです。
セールの目玉商品ならまだしも、通常営業でこれですから、これはもうビジネスとして成立していません。
注文を受ければ受けるほど、作れば作るほど赤字だったのでしょうし、実際当社もそうなっていました。
OEMは一括納品で製品在庫のリスクがないので薄利でもよさそうですが、実際には余剰資材・問題発生時の検品代＋補修代・クレーム値引・不良品発生など、見積書には現れない経費が山ほどあります。
縫って終わりの普通の製品と違って、新品を洗って痛めつけて完成するデニム製品は、規格通りものを作る難易度が極めて高く、リスクが非常に高いのです。
それらで利益が削られ、人件費すら出ていませんでしたが、小売と違って１回の納品で百万円単位の売上が立つので、お金が回っているうちは赤字という事実に気付きにくいのです。
コロナの真っ最中のころ、文章に書けない色んな事があって、弊社のOEM部隊をスタッフ丸ごと引き受けたいという企業が現れました。
赤字とはいえ、手放すとなると、零細企業から億単位の売上が消滅するのですから、ダメージは小さくありません。
しかしよくよく考えると、社員3名の人件費と取引先を含めて、赤字を丸ごと引き受けてくれるということです。
このまま無理に継続したら経営が危なくなるのは目に見えていたので、さっさと移籍して頂きました。
というわけで、現在のOEMは専任を置かずに、弊社の存在価値を認めて正当な利益を頂けるホワイトなお取引先様だけに限って続けているので、ご新規様は物理的にお引き受けできなくなっております。
なので、「安く作りたい！」という目的でお問い合わせ頂いても、正当な利益を乗せたお見積もりしか出しません。
加えて、50枚以下の小ロット生産は、かかる手間は500枚作るのと同じなので、利益もそれなりに頂きます。
低価格や小ロット生産をご希望の場合、お互い時間の無駄ですので、お問い合わせはご遠慮下さい。
OEM業界では、先に燃料が尽きた方から墜落するような命がけのフライトが今日も進行中です。