第12回コラム
令和の「耳騒動」
世界中で空前のヴィンテージブームですね。
大戦モデルなどは恐ろしいプライスタグが付いています。
そんなヴィンテージの中でも、とりわけ珍重されているのが、セルビッジ(赤耳)付きのジーンズ。
一般的には、赤がLevis、Leeは白、Wranglerは青とされています。
ではなぜメーカーで色が違うのでしょうか?
実は、初期のセルビッジは白しかなく、つまり全てのブランドが白でした。
ところが、デニム生地はぱっと見は全部同じですから、リーの生地をリーバイスに納入したり、ラングラーの生地をリーに納入したりのミスが多発したのです。
もちろん、品番などで管理していたはずですが、この頃の作業員の識字率は高いとは言えず、ミスを誘った原因だったかもしれません。
そこで、発送先のブランドを見分ける目印として、耳に色付きの糸を1本織り込んで、出荷ミスをしないように工夫したのが始まりなのです。
昔の赤耳は色落ちしやすい直接染料で染めた糸なので、本物のヴィンテージは赤が退色して、薄いピンクかほとんど白に近い色が多いです。
今ではセルビッジといえばほとんが赤なので、ブランドを見分ける印にはなりませんが、実はこんな歴史が理由でした。
そんな赤耳デニムですが、現在コメ騒動並の品薄状態にあります。
世界的なヴィンテージブームによって、赤耳デニムの需要が高まり、とりわけ「日本製デニム」は世界最高品質とされています。
世界的需要が高まるのは結構なことですが、赤耳を織れるシャトル織機の数は限られている上に、古いシャトル織機で織っている事がプレミアムの理由であるため、新造もできません。
なお、シャトル織機の製造はすでに失われたロスト・テクノロジーのため、新造は簡単ではありません。
加えて、縫製工場も、この30年の間に廃業しきってしまい、生産キャパシティもまた同じです。
2026年の4月の時点で、赤耳デニムは2年先まで売約済で、これから手配しようとしても3年先でないと買えません。
縫製工場もまた半年先まで埋まっており、生地があったとしてもすぐには縫えません。
こんな事になる前は、赤耳は注文すればすぐ買えたし、縫製工場が埋まっているのはせいぜい2ケ月先まででした。
今起きていることは恐らく、コメ騒動よろしく、切迫感から30反でいいところを100反オーダー入れているブランドが少なからずいるということ。
30反使った後はブランドは在庫の70反を消化せねばなりませんから、生地メーカーへのオーダーは2年しなくていい事になります。
だぶついた生地はどこかの倉庫に積み上がる事でしょう。
まさに「令和のミミ騒動」です。
日本製の赤耳ジーンズは、これまでの日本国内向けではなく、海外向けがメインになります。
価格決定はドルベースで行われますから、円安の今、この先は天井知らずの高騰が予測されます。
欲しい方は買える値段の今のうちに買っておくことをお奨めします。